Vol 07

    周遊型観光から体験型観光へ!

    自然や歴史が育んだ沖縄の宝物

    沖縄の持つ独自の自然環境や歴史・文化は、沖縄を訪れるみなさんが他では体験できないような素晴らしい思い出を作り出します。観光地巡り、ダイビング、ワーケーション、MICE、親族や友人の訪問など、さまざまな目的を沖縄で叶えることができます。
    その中でも、風光明媚な景色とともに思い出を刻める「リゾートウェディング」、沖縄が発祥の地である「空手」は、とりわけ世界から注目を集める沖縄独自の魅力です。
    今回の「沖縄観光みらい新聞」では、この2つの分野でそれぞれ活躍するみなさんへのインタビューを通して、その魅力を深堀りしていきます!

    大人気の観光コンテンツ「リゾ婚」

    沖縄のリゾートウェディングは、国内トップの地位を築いており、国内のみならず海外からも挙式やフォトウェディングで多くの人が沖縄を訪れています。

    沖縄県が令和4年度に策定した「第6次沖縄県観光振興基本計画」では「カップルアニバーサリーツーリズムの推進」を盛り込んでいます。リゾートウェディングのみならず、プロポーズやハネムーンの場所として、沖縄を「カップルで訪れる特別な場所」としてイメージしてもらおうというものです。また、結婚記念日や、夫婦が再び愛を誓ってお互いの気持ちを伝え合う「バウ・リニューアル」など、さまざまなタイミングで幸せな時間を過ごしてもらうカップルアニバーサリーを推進する動きも高まっています。

    2018年に沖縄でリゾートウェディングを実施したのは1万6000組を超えており、少なくとも約26万6000人の方が沖縄に足を運んでいると推計されています。「沖縄=素敵な思い出の地」としてもらうことで、末永くリピーターとして訪れてもらうことが期待できます。

    愛好家が憧れる沖縄空手

    世界中に1億3000万人もの愛好家がいるとされている空手。その起源には諸説あるものの、沖縄が琉球王国だった19世紀初頭に、沖縄固有の武術「手(ティー)」と中国武術が融合してできたとも言われています。

    万国津梁の精神で近隣諸国との交易をして栄えた琉球王国の歴史が育んだ空手は、厳しい修練を通して強靱な身体と不屈の精神を培うと共に、平和を愛し礼節を重んじる人格形成に貢献する武道として現在まで受け継がれてきました。

    「空手に先手なし」という不戦の理念に代表されるようなその精神性は、世界中の人々を感化し、愛好家にとって沖縄はまさしく空手のメッカともなっています。

     

    前述の「第6次沖縄県観光振興基本計画」では、そのような沖縄の魅力を前面に打ち出し、「空手ツーリズムの推進」を謳っています。これにより、観光産業や関連産業への波及効果が期待できることから、空手を目的とした交流人口を増やし、「空手関連産業」という新たな産業の創出を積極的に推進しています。

    また、沖縄空手会館を拠点に「空手発祥の地・沖縄」を強力に発信していくことや、沖縄空手世界大会の定期開催などを通じた国際交流にも力を入れています。

    外国人を受け入れている空手道場の平均滞在日数は9日間と比較的長く、沖縄の文化や歴史にも関心が高い人々に合わせた観光メニューを用意することで高い経済効果も期待されます。

    進化を続ける沖縄のリゾートウェディング

    沖縄のソフトパワーを生かしたリゾートウェディングの分野で活躍するみなさんにお話を聞きました。働き甲斐やリゾートウェディング業界の展望など、実際の“現場”から見える沖縄観光の未来はどのようなものがあるのでしょうか?

    観光で頑張る人インタビュー
    沖縄リゾートウェディングの地位向上と発展を目的に活動する、一般社団法人沖縄リゾートウェディング協会の翁長由佳代表理事と、山本真嗣理事のお二人にお仕事の魅力をお伺いしました。

    Q.沖縄のリゾートウェディング市場の現状はいかがでしょうか?

    リゾートウェディングはコロナ禍においても、カップルやご家族など体調管理や行動確認のしやすい小規模団体ということもあり、回復の早い市場でした。特に昨年の夏は、海外挙式を沖縄に変更する案件が増えるなど、コロナ前も含め当協会独自調査では過去最高の受入件数を打ち出しました。沖縄の場合は特に、事業者同士が協力し合う前向きで明るい姿勢があった他、『コロナが落ち着いたらぜひ沖縄に戻ってきてくださいね』とウェルカムな雰囲気や新たな取り組みを発信し続けたことが功を奏したのだと思います。

    Q.沖縄観光を担う人材育成も重要なポイントですよね。

    沖縄のリゾートウェディングのニーズが伸びる一方で、現場ではどの職種も人材不足という現状があるため、人材の確保・育成に積極的に取り組んでいます。フォトやメイクの技術向上だけではなく、ライフスタイルに応じた働き方の提案など、女性の働きやすい環境作りの強化も推進しています。また、県内外のブライダル専門学校との連携も深めています。ウェディングは幸せを生み出す“ハッピー産業”です。携わる側としてもカップルの特別な瞬間に触れることができ、毎回幸せで温かい気持ちになれます。

    Q.沖縄のリゾートウェディングが人気な要因は何でしょうか?

    やはり沖縄の自然環境です。海沿いで景色の良いチャペルが充実しています。沖縄のように海も空も緑も花々もそろっている場所は珍しくて、いろんなバリエーションで二人の写真を残せるというのは大きな強みだと思います。最近では自然だけではなく、コザや金武のアメリカンな街並みでの撮影など、街中での撮影を希望する人も増えており、多様なニーズに応えられるのも沖縄が選ばれる理由です。

    Q.沖縄のリゾートウェディングはどのように進化を続けていますか?

    コロナ禍においては、新しいサービスや魅力の開拓に励んでいました。閉館後の沖縄美ら海水族館を貸し切って、ジンベエザメのいる大水槽の前で挙式をするプランも立ち上がっており、好評を頂いています。一瞬も同じ背景のない場所での挙式は圧巻でとても感動します。また、沖縄県ではウェディングの他にプロポーズ、ハネムーン、バウ・リニューアルなどカップルの特別な記念日を沖縄で過ごす取り組みを進めています。例えば、トレッキングや釣り、ナイトコンテンツなど、ハネムーンで沖縄の自然アクティビティや異文化体験をしてもらい、その楽しそうな様子を撮影するプログラムも人気です。県内市町村とも連携し、挙式後そのまま延泊してもらって沖縄の魅力をさらに体験して頂くプログラムを開拓、提供することで、カップルの満足度の向上とあわせ、沖縄観光にも貢献していきたいです。

    「空手と沖縄のストーリー」伝えることが大切

    観光で頑張る人インタビュー
    空手の魅力を国内外に発信していくことは、沖縄観光の発展につながっていきます。世界中の空手愛好家は、沖縄に何を求めているのでしょうか?空手をユネスコの無形文化遺産に登録しようという機運も高まっています。
    「空手道及び古武道発祥の地・沖縄」を世界へと発信する一般社団法人沖縄伝統空手道振興会事務局長で、沖縄空手案内センター所長の上原邦男さん

    Q.海外の空手愛好家は沖縄をどう見ているのでしょうか?

    今、空手は約190か国に普及しており、ほぼ世界中に広がっているとも言えます。それぞれの国で空手をやっている人、特に道場を開いているレベルの人がさらなる向上を目指して沖縄に来ることが多いです。海外の人はとりわけ起源やルーツに敬意を払う考え方を持っており、沖縄の先生に教えてもらうことで、自らの空手を『元の然るべき形に戻す』という目的を持っています。沖縄を訪れる空手愛好家の方は、アメリカやヨーロッパからが多いですが、人数の伸びで言えば一番はインドです

    Q.空手ツーリズムをより魅力的なものにするために大切なことは何ですか?

    ムスリムの人がメッカに聖地巡礼するように、空手のメッカとして沖縄を位置付けようと努力しています。沖縄に来た方に空手を教えるだけではなく、歴史や文化など『沖縄空手が持つストーリー(物語)』を伝えることが大切です。例えば、オーストリアのザルツブルクに行くと『あぁ、モーツァルトが生まれた場所だな』と思うように、どの観光地にもその地のストーリーがあり、私たちはそのストーリーを楽しみにして行くわけです。沖縄でそのストーリーを感じた空手愛好家のみなさんが、自分たちの国に帰って生徒に伝えることで、その生徒もまた沖縄に憧れ、来てもらえるという循環が生まれます。空手というものは沖縄でしか生まれなかったはずだということを私は強調したいです。沖縄の気候風土や自然環境、文化も含めた、沖縄を取り巻くありとあらゆる物事が空手を生み出しました

    Q.沖縄の空手がユネスコの無形文化遺産に登録されることによって何を期待しますか?

    ユネスコの無形文化遺産に登録されることで、世界的にも空手文化を守っていこうという認識が生まれますし、沖縄県民としても誇りになります。と同時に、空手ツーリズムも盛んになるはずです。語学や国際交流の面でも、お互いの行き来が活発になるのは沖縄社会全体としても非常に良いことだと考えています。もっと沖縄を身近に感じてもらって、家族で来てもらった時に、例えば旦那さんが空手をしている間に、奥さんの買い物や子どもたちの遊べる場所がさらに充実すれば、観光地としての魅力もさらに高まると思います